フェーン現象の新事実は、
・約80%が山の上空からの吹き下ろしで発生(力学メカニズム)
・一般的なフェーン現象(熱力学メカニズム)のほとんどが複合型(マルチメカニズム)
・約20%は高気圧下で発生
・日中より夜間に発生しやすい
風が山を越えるとき(風上側)に雨を降らせ、山を下りるときに山の下りた地上(風下側)で気温が高くなる「フェーン現象」
夏場の天気予報で「フェーン現象により最高気温が~」と35℃超えの猛暑日や、40℃を超える日(仮称:酷暑日)もあると言われ、よく聞く単語ではあるけれど、仕組みがよくわからない方もいると思います。
しかも、今まで常識とされていたフェーン現象のメカニズムが、実は大きく違っていたなんて事実も発表されているんです。
今回は、そもそもフェーン現象とは何か、新事実とは何かをわかりやすくご紹介します。
フェーン現象の仕組み
わかりやすくするため、詳しく厳密な理由や数字は割愛しますが(気温や気圧でも変化するため)、まず前提として、
気温は100メートル上下するごとに1℃上下します。
例えば山(高さ2,000m)を挟んだ風上側の気温が25℃だとします。
この25℃の風(空気)が山を越えるとき、2,000メートルの山の頂上では、20℃気温が下がるので、5℃の風になります。
逆に、この5℃の風が山頂から地上へ下りるときは、風は同じ25℃に戻ります。
しかし、風(空気)に含まれる水蒸気が山を上る途中で雲になり雨として降ると、100m上がるごとに1℃気温が下がっていたのが、0.6℃の下がり幅になり、山頂で風(気温)は13℃となります。
一方、山頂から地上へ下るときには100mごとに1℃気温が上がるため、13℃だった頂上の風が、地上(風下)では風上の25℃より高い33℃になります。
このため、フェーン現象が起きると、山を越えた風が暑くなり、風下側では高温になります。
フェーン現象の新事実
一般的にはこのように、地上の風が高い山を越えたときに起きるフェーン現象(熱力学メカニズム)が通説と考えられてきました。
しかし、筑波大学の研究チームが2021年に発表した論文によると、通説とされたフェーン現象は日本ではほとんど起こっておらず、
山越えをするフェーン現象より、「雨が降らず、山を越えるのではなく、山の上空の風が地上に吹き下りてくる」パターン(力学メカニズム)のほうが多く発生している
という解析結果が出ました。
過去15年間に生じたフェーン現象198例を対象に、気象モデルとスーパーコンピューターを用いて解析した結果によると、
対象としたフェーン現象の80%以上は、山の上空の風が吹き下りて発生しており(力学メカニズム)、山を越えるタイプ(熱力学メカニズム)は20%以下しか発生していませんでした。
しかも、山を越えるタイプのフェーン現象のほとんどが、山を越えるタイプと上空から吹き下りるタイプ両方を合わせた複合タイプ(マルチメカニズム)であることが示されました。
さらに驚くべきは、通説とされていたフェーン現象は雨を伴うため、低気圧や台風の接近時に発生しやすいとされてきましたが、
出典:筑波大学「フェーン現象は通説と異なるメカニズムで生じていることを解明」
解析対象のうち約20%は高気圧下で発生しており、また、日中よりも夜間に発生しやすいことも分かりました。
日中、夜間も高温多湿で熱帯夜が多い理由は様々ありますが、こういったメカニズムが要因の一つかもしれませんね。
「フェーン現象によって~」と天気予報で聞いたときは特に、暑さで体調を崩さないように体を冷やしたり、水分補給をこまめに行うようにしましょう。
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