腰痛の【新常識】と正しい予防法・改善法

まず結論をお伝えします。

慢性的な腰痛は、

悪い姿勢は腰痛に関係ない
安静に予防・改善効果はない
腰痛ベルトも予防に無意味
捉え方を修正すると改善が見込める


これが慢性的な腰痛の新常識です。

そうなる理由と具体的な対策法は、この後わかりやすく解説していきます。

(注:これから紹介する情報は、すべて「慢性的な」腰痛に関するものです。治療が必要な腰痛は、専門医の指示に従ってください)

長時間立ったり座ったりで発生する慢性腰痛はもちろんのこと、運動時や移動時のふとした瞬間に急に腰が痛くなる急性腰痛。

はたまた椎間板や関節に痛みが出る腰痛など、様々な原因で腰は痛みを発します。

そんな腰痛の予防や改善には、

「良い姿勢や安静を心がけるといい」
「腰痛サポーターを着けるといい」

など、医師や専門家が言うけれど、実践してもなかなか改善しないことありませんか?

実は、良い姿勢や腰痛グッズには効果がなく、腰痛に対する捉え方や行動を変えるほうが予防・改善効果が高いんです。

今回は、腰痛の原因、良い姿勢や腰痛グッズに効果がない理由、腰痛予防・改善に効果的な科学的テクニックを、論文やガイドラインをもとにご紹介します。

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腰痛の原因

日本整形外科学会、日本腰痛学会が監修している「腰痛診療ガイドライン2019」によると、

腰痛の原因の内訳は椎間関節性22%、筋・筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄症11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%などであった。

出典:腰痛診療ガイドライン2019

つまり腰痛の多くは、椎間板や筋肉、関節に炎症や変形が起きることにより発生します。

さらに腰痛タイプは主に2つに分かれ、ぎっくり腰や骨折などの急性的なものや、繰り返し動作や同じ姿勢を長時間続けることによる圧迫やコリなどの慢性的なものがあります。

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悪い姿勢は腰痛に関係ない

一般的には、「良い姿勢」を心がけることで腰痛予防や改善に効果があるとされますが、姿勢と腰痛の関係を調査するいくつかの研究を実施したところ。

大規模な青年集団を対象に、「前かがみの」座り方や「非中立的」な立ち姿勢(背中を丸める、前かがみにするなど)が腰痛と関連があるか、あるいは将来の腰痛を予測するかを調査しましたが、この見解に対する支持はほとんど見つかりませんでした。

出典:Having ‘good’ posture doesn’t prevent back pain, and ‘bad’ posture doesn’t cause it

つまり、前かがみなどの悪い姿勢で立ったり座ったりしても、悪い姿勢が腰痛の原因となっている事実は見つけられないという結果が出ました。

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腰痛ベルトも予防に無意味

過去に行われた「原因不明の腰痛の治療法」に関する論文、6,133件の中から23件(30,850人分のデータ)をピックアップして精査したところ。

運動単独、または腰痛教育との併用が腰痛予防に効果的であることが示唆されている。

腰痛教育のみ、腰痛ベルト、靴の中敷きなど、他の介入は腰痛を予防しないようである。

出典:Prevention of Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis

つまり腰痛ベルト(コルセットや腰痛サポーター)やインソールでは腰痛の予防にならず、運動をすることが腰痛予防に効果的という結果が出ました。

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捉え方を修正すると楽になる

医学的なアプローチ(薬や注射、手術など)が必要な腰痛は専門医の診察と処置を行って貰うべきです。

しかし、日常生活を改善すると良くなる可能性が高い、慢性的な腰痛(いわゆる腰のコリ)とリハビリ時には「認知行動療法」が効果的です。

「認知行動療法」とは、「自分の認知(捉え方)を修正することで、行動や気持ちを改善する心理的療法」のこと。

先程と同じ腰痛診療ガイドライン2019でも、慢性的な腰痛はもちろん、医学的なアプローチ後の腰痛のリハビリに認知行動療法が有用である可能性が示されています。

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出典:腰痛診療ガイドライン2019

また、過去に行われた腰痛と認知行動療法の研究1,629件から、本当に質が高い23件のデータ(合計3,359人が参加した実験)を抽出し、温熱治療や運動療法などの定番の腰痛治療法と効果を比べる研究を行ったところ。

認知行動療法の介入は、期間や年齢に関係なく、腰痛患者に対して無治療やガイドラインに基づく他の積極的な治療と比較して、痛み、障害、生活の質の長期的な改善をもたらした。

出典:The Effectiveness of Cognitive Behavioural Treatment for Non-Specific Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis

他の治療法にも効果はありましたが、認知行動療法には長期的でより高い効果が認められました。

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腰痛改善テクニック

では、慢性的な腰痛の予防や改善には何が効果的かご紹介します。

薬や湿布、マッサージなどにも短期的な改善効果はありますが、お金がかかるので、今回はできるだけお金がかからない方法をご紹介します。

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同じ姿勢や動作を繰り返さない

腰痛は、姿勢の良し悪しは関係なく、同じ姿勢を長時間続けて動かさなかったり、逆に同じ箇所に負荷のかかる動作を何度も繰り返すことによって発生しやすくなります。

30分~1時間に1回は席を立って移動したり、ストレッチしたり体勢を変えたりするなど、同じ箇所に負担がかかり続けないようにしましょう。

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運動をする

腰痛診療ガイドライン2019によると、運動療法が腰痛の予防と改善に有用であると推奨されています。

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出典:腰痛診療ガイドライン2019

運動は、有酸素運動(ウォーキング、ストレッチなど)や無酸素運動(筋トレや水泳など)どちらでも良く、腰に強い痛みが出ず、継続できる運動であれば、何を選んでも問題ありません。

逆に安静にしていると、筋肉を動かさないことにより血流が悪くなり、筋肉にコリや炎症が発生することで腰痛が悪化するので、強い痛みが出ない程度に積極的に動かしましょう。

医学的アプローチを行っている方の場合は、医師の指示に従ってください。

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ストレッチをする

運動と併用するのはもちろん、運動ができない場合でもストレッチは効果的です。

合計515人を対象とした12件のデータを精査した研究では、スランプストレッチ(下記画像のように、座って足を壁に垂直に付け、上半身を前屈させるストレッチ)が腰痛改善に効果があると示されています。

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非神経根性腰痛に対するスランプストレッチの有効性

腰痛患者の痛みを軽減するためにスランプストレッチングの使用が有利であることが判明しました。

さらに、腰痛集団における障害改善に対するスランプストレッチの効果についても、大きな効果量と有意な結果が見つかりました。

出典:Effectiveness of Slump Stretching on Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis

つまり、スランプストレッチが腰痛による痛みや動きの改善に有効であるという結果が出ました。

スランプストレッチにも効果がありますが、他にもアメリカ整形外科学会が奨める、腰痛に効果的なストレッチの一例として掲載されているものも紹介します。

(出典:Spine Conditioning Program

ニーリングバックエクステンション

膝と手のひらを床につき、手を伸ばして肩を乗せる

その状態のまま腰を床に向かって下げ、 5秒間キープ

体を後ろに下げ、お尻をかかとに近づけて座り、腕を伸ばして5秒間キープ

この2つの動作を10回繰り返す

ニートゥーチェスト

床に仰向けに寝る

片足を上げ、膝を胸に近づけ、膝やすねを掴み、足を限界まで引き、5秒間キープ

反対の足も同じようにして、最後に両足を抱える

この動作を10回繰り返す

腰を温める

短期的な予防・改善法にはなりますが、風呂にしっかり浸かったり、カイロなどで温めるのも良いでしょう。

温めることで血流が良くなり、筋肉の張りやコリを和らげることができます。

現在は、電子レンジで温めて繰り返し使えるカイロもあるので、そちらを使用するのもオススメです。

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認知行動療法を実践する

予防・改善に認知行動療法を取り入れるのもオススメです。

認知行動療法で重要なのは、「腰痛への間違った知識を修正し、正しい知識を学んで実践すること」

正しい知識はこれまで紹介した内容で理解できたと思いますので、ここからは実際に行動に移してみましょう。

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腰は簡単に傷まないことを学ぶ

腰を庇う動きや安静を心がけると、結果的に運動不足になり、腰を動かさないことで腰痛予防・改善から遠くなります。

運動は腰痛に有用であり、姿勢の悪さは腰痛に関係ないので、強い痛みが出ない程度に腰を動かし、恐怖を取り除いていきましょう。

意外と腰を動かしても問題ない(安静にしなくても問題ない)、むしろ良くなっていく実感が伴えば、認知も修正されていきます。

また、認知行動療法の一環として、腰痛に関する本を読むこともオススメです。

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腰痛日記をつける

その日1日に感じた腰痛の点数を10点満点で毎日記録してみてください。

点数と一緒に、ごく簡単なメモ(走り書き)程度で構わないので、その日の仕事内容や印象的な出来事なども記録すると、自分が何をキッカケに腰の痛みを感じているか、どんなタイミングで腰が痛くなるかが明確になります。

ずっと座っているときなのか、立っているときなのか、はたまた何かにストレスを感じたときなのか。

自分が原因と思っていないことが原因の場合もあるので、腰に痛みを感じる前に何があったか記録して見返してみましょう。

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また他にも、体重、喫煙、飲酒、運動不足、ストレスが腰痛に関連しているので、体重管理、禁煙、禁酒、運動、ストレス解消も有効です。

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出典:腰痛診療ガイドライン2019

ただし、腰痛の原因が医学的アプローチが必要なく、予防・改善法を実践しても問題ないと医師の判断がされている方のみ取り入れてください。

急性腰痛発生直後や医学的処置が必要な方、強い痛みが出る方や安静が必要な方などが取り入れると、症状が悪化する可能性があります。

必ず医師に相談や診断、治療を受けた上で行ってください。

あなたの腰痛が楽になって、生活の質が向上すれば幸いです。

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