【ガイドラインが教える】間違った肩こりの常識と正しい予防法・改善法

まず結論をお伝えします。

慢性的な肩こりは、

睡眠不足や職場環境の満足度が影響する
薬や湿布の効果は短期的
良い姿勢に予防効果はない
捉え方を変えると改善効果が見込める


これが慢性的な肩こりの新常識です。

そうなる理由と具体的な対策法は、この後わかりやすく解説していきます。

(注:これから紹介する情報は、すべて「慢性的な」肩こりに関するものです。治療が必要な肩こりは、専門医の指示に従ってください)

リモートワークや副業をする機会が増え、ますます悩む人が多くなっている肩こり。

長時間のデスクワークやスマホの見過ぎなどで発生する慢性的な肩こりに、日々ツラい思いをしている方も多いでしょう。

予防や改善には「良い姿勢を心がける」「湿布を貼ったり薬を飲む」など、医師や専門家に言われて試しているけれど、実践してもなかなか改善しないことありませんか?

実は、良い姿勢や湿布・薬にはあまり効果がなく、日々の行動を変えるほうが予防・改善効果が高いんです。

今回は、慢性的な肩こりの原因、良い姿勢や薬物療法の効果が薄い理由、肩こり予防・改善に効果的な科学的テクニックを、ガイドラインをもとにご紹介します。

肩こりの原因

肩こりは肩だけが凝っている状態ではなく、首のつけ根(頭と首の境目周辺)から、背中(肩甲骨周辺)にかけて、筋肉が張ったり痛みを感じる状態を指します。

酷いと頭痛や吐き気を伴うことがあり、慢性的な肩こりは診察や検査では原因がわからず、様々な要因が痛みに関係してきます。

慢性疼痛(とうつう:痛み)診療ガイドラインによると、肩こりになる原因には以下のようなものがあります。

発症危険因子として、女性、睡眠不足(睡眠時間5時間未満)、仕事に関連した抑うつ気分、体幹筋量の低下、デスクワークなどが挙げられている。

(中略)

また、作業関連性の頚部痛(首の痛み)の発生に関連する項目として、職場環境への満足度、キーボードの位置、同一作業の繰り返し、自覚的な筋緊張がある。

出典:慢性疼痛診療ガイドライン

他にも肩こりの原因として、椎間板ヘルニア、肩関節周囲炎(いわゆる四十肩、五十肩)など、椎間板や骨、筋肉などに変形や炎症が起きることでも発生します。

薬や湿布の効果は短期的

慢性的な肩こりが起きると、薬や湿布などを購入して使用する(または医師から処方される)こともありますが、短期的な改善には一定の効果があるものの、長期的な効果や改善は期待できません。

先程と同じ、慢性疼痛診療ガイドラインによると、

薬物による頚部可動性や圧痛閾値(痛みを感じる刺激の最低値)、QOL(生活の質)に対する効果は、他の治療やプラセボと同程度であり、薬物療法の有用性は認められなかった。

このように、薬物療法のみで肩こりの痛みや、それに伴う機能障害、QOLの低下を改善させることは困難であり、他の治療との組み合わせが必要である。

出典:慢性疼痛診療ガイドライン

つまり、薬や湿布などの治療法は首や肩の痛みや動きを短期的に楽にする効果はありますが、他の治療法と比べて特別効果が高いわけではないので、運動など他の改善法と組み合わせる必要があると示されています。

予防には良い姿勢より運動

一般的には、「前かがみや猫背などをせず、アゴを引いて良い姿勢を保つことで肩こりの予防になる」と言われていますが、良い姿勢より運動するほうが効果は高くなります。

慢性疼痛診療ガイドラインでも、

運動介入の有用性が中等度のエビデンスで報告されている。

(中略)

一方、人間工学的な介入(作業環境指導、姿勢指導、アームサポートの使用など)による予防効果は認められていない。

出典:慢性疼痛診療ガイドライン

このように、意識的に良い姿勢をしたり、腕を支えたりなど作業環境を整えても、予防効果はないと報告されています。

肩こりの予防・改善法

慢性的な肩こりに関しては、どれも短期的な予防・改善効果のみで中~長期的な改善効果を示したデータはほとんどないので、短期的に効果のある手法を組み合わせて、習慣として日常的に行うことが重要です。

薬や湿布、マッサージなどにも短期的な改善効果はありますが、お金がかかるので、今回はできるだけお金がかからない方法をご紹介します。

同じ姿勢を続けない

肩こりに姿勢の良し悪しは関係なく、同じ姿勢を長時間続けて動かさなかったり、逆に同じ箇所に負荷のかかる動作を何度も繰り返すことによって発生しやすくなります。

30分~1時間に1回は席を立って移動したり、作業を止めてストレッチをしたりなど、同じ箇所に負担がかかり続けないようにしましょう。

特にパソコンやスマホを見るために、猫背や首が前かがみになった状態をずっと続けると、4~5kgあると言われる頭を首と肩の筋肉だけで支えることになり、血流が悪くなったり、筋肉が張って肩こりの原因になります。

また、前かがみを日常的に続けることによってストレートネック(通常はS字に湾曲している首の骨が真っ直ぐになった状態)になると、さらに肩こりが悪化するだけでなく、椎間板や骨に以上が発生して、椎間板ヘルニアなどになる可能性が上がってしまいます。

肩や首を温める

短期的な予防・改善法にはなりますが、湯舟に首まで浸かったり、カイロなどで温めるのも良いでしょう。

温めることで血流が良くなり、筋肉の張りを和らげることができます。

現在は、電子レンジで温めて繰り返し使える肩用カイロもあるので、そちらを使用するのもオススメです。

複数の運動をする

運動が肩こりには有効ですが、運動も好きなものを闇雲にやれば良いわけではなく、2つ以上の運動を組み合わせるのが効果的です。

慢性疼痛診療ガイドラインでも、

運動療法(筋力増強運動、柔軟性運動、有酸素運動、ヨガ、ピラティスなど)は、それぞれ単独では痛みおよび身体機能の改善効果は乏しく、プログラム間に差を認めないが、併用することにより短期的な痛みの軽減および身体機能の改善を示すことが報告されている。

出典:慢性疼痛診療ガイドライン

つまり、「筋トレ+ストレッチ」や「ジョギング+ヨガ」など、2つ以上の運動を日常的に行うようにすると、肩こりの改善に効果的と推奨されています。

自分が日常的に実践しやすい運動を組み合わせて実践してみてください。

認知行動療法を実践する

医学的なアプローチ(薬や注射、手術など)が必要な肩こりは専門医の診察と処置を行って貰うべきですが、慢性的な肩こりには「認知行動療法」も有効です。

「認知行動療法」とは、

「自分の認知(捉え方)を修正することで、行動や気持ちを改善する心理的療法」のこと。

慢性疼痛診療ガイドラインでも、

認知行動療法、教育などの心理行動学的アプローチは、単独では有効性が乏しいが、運動療法などと併用することにより短期的な痛みの軽減および身体機能の改善効果を認めると報告されている。

出典:慢性疼痛診療ガイドライン

このように、認知行動療法を運動などと併用すると効果があると示されています。

認知行動療法で重要なのは、「肩こりへの間違った知識を修正し、正しい知識を学んで実践すること」

正しい知識は上記内容で理解できたと思いますので、ここからは実際に行動に移す方法をご紹介します。

首は簡単に傷まないことを学ぶ

首や肩をかばう動きや安静を心がけると、結果的に運動不足になり、肩周りを動かさないことで肩こりの予防・改善からは遠くなります。

運動は慢性的な肩こりに有用であり、長時間同じ姿勢を続けない限り、姿勢の良し悪しは肩こりに関係ないので、強い痛みが出ない程度に肩や首を動かし、恐怖を取り除いていきましょう。

意外と首や肩を動かしても問題ない、むしろ良くなっていく実感が伴えば、認知も修正されていきます。

肩こり日記をつける

その日1日に感じた肩こりの点数を10点満点で毎日記録してみてください。

点数と一緒に、ごく簡単なメモ(走り書き)程度で構わないので、その日の仕事内容や印象的な出来事なども記録すると、自分が何をキッカケに肩や首に痛みを感じているか、どんなタイミングで肩や首が痛くなるかが明確になります。

ずっと座ってパソコンやスマホを見ているときなのか、何か作業をしているときなのか、はたまた何かにストレスを感じたときなのか。

自分が原因と思っていないことが原因の場合もあるので、肩や首に痛みを感じる前に何があったか記録して見返してみましょう。

ただし、肩こりの原因が医学的アプローチが必要なく、予防・改善法を実践しても問題ないと医師の判断がされている方のみ取り入れてください。

急性的な首や肩の痛みの発生直後や医学的処置が必要な方、強い痛みが出る方や安静が必要な方などが取り入れると、症状が悪化する可能性があります。

危険な肩こりには下記のような状態があります。

一般社団法人 日本臨床内科医会「肩こり

肩こりは様々なことが要因となっているので、上記状態以外でも違和感や痛みがある方は、必ず医師に相談や診察、治療を受けた上で、予防・改善法を取り入れても問題ない方のみ行ってください。

あなたの慢性的な肩こりが良くなるキッカケとなれば幸いです。

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